宇治書店~日々ぷかぷか~

「書店を第二の家」にしたいという想いから、このブログを立ち上げました。子育て中のため実際に店頭に立てない日々が続き、伝えたいものが溢れてきたので架空の書店で接客をしつつ、本を紹介していけたらと思います。読んだ人がほっこりする空間を目指していけたらと思います。迷ったときは、お店に遊びに来てください。

注目の作家 彩瀬まる 骨を彩る が2月上旬に幻冬舎から文庫で発売予定!改めて読み直してみましたよ。

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いらっしゃいませ。こんにちは。

本日は心地の良い天気で、皆さん散歩帰りに寄ってくださいます。西日が当たるこの時間がとても好きなのですが、書影も本書に相応しく隠と陽を感じさせるように撮れたかなと自負しております。

 

2013年に発売した本書。

あのひとは蜘蛛を潰せない という本を読んで衝撃を受け、彩瀬まるさん天才だ!と叫び、叫んだところ同業の方に本書を勧められて読み、また、天才だ!!と確信したご縁があります。

 

一度、トークイベントに参加させていただいた際に、実際にお目にかかり、まるさんが声を出すたびに惹きつけられる強さだったり、脆さだったり、そういうものを自分で考えて言葉にするための間だったり全てが心を掴む方だなと思いました。言葉を編む職業だからかもしれませんが、言葉を大切に丁寧に発されていると感じましたよ。

 

当店のお客様の中に、物腰の柔らかい日々を丁寧に生きていらっしゃる年配の女性がいます。まるさんは、そう、その方のようにどこか達観している雰囲気がありました。トークが終わると、がらりと変わってキュートでよく笑う年相応の表情になるのです。そんなところも、また魅力的でした。

 

マザーテレサは日本に訪れた際、

「豊かそうに見えるこの日本で、心の飢えはないでしょうか。だれからも必要とされず、だれからも愛されていないという心の貧しさ。物質的な貧しさに比べ、心の貧しさは深刻です。心の貧しさこそ、一切れのパンの飢えよりも、もっともっと貧しいことだと思います。日本のみなさん、豊かさの中で貧しさを忘れないでください。」

とおっしゃった。

心に「ない」を抱える人は、この日本に一体どれだけいるのでしょう。便利になればなるだけ、心が「ない」と感じる日本に一体なにが必要なのでしょう。

 

本書を読んでいて、わたしはいつも心掛けるようにしていることを、改めて思い直しました。それは、どんな人のことも、一度は受け入れてみる ということ。なんですが、これがなかなか難しく、苦しい。小春が葵に見せたように、好きなのに受け入れられなくて壁に悩んだり、こちら側の価値観を知らず押し付けてしまっていたり、する。大人になると、うまく遠ざけようとする。本書にある通り。フツーに毎日を過ごしていると、ふとした瞬間寂しさに襲われる。その寂しさは人によっては肌と肌を合わせないと埋まらない、実際はそうしても埋まるものではないのだろうけど、そうせずにはいられない空虚さを現代の人は持っている。

 

本書は、目を閉じてしまいがちなものたちに、きちんと目を開けて向き合うことが大切なのだと語っている。背けるから自分に嘘をついている気がして苦しくなる。一回嘘をついた自分が信じられなくなる。疑問はぶつけてみればいい、分からないなら挑戦してみればいい、悲しいなら泣けばいい、相手に合わせて心を殺して生きるよりよっぽど得られるものは大きいのだから。

空気が読めるということは大事だと思う。でも、自分の心に嘘をつくのは、やっぱり傷が深くなる前にやめよう。

わたしは自分に嘘や言い訳ばかりしてきた。逃げ道をまずは探す癖がついていた。だから、本に助けを求めた。自分がどうしたらいいか分からなかったから。あるいは、分かっていたけど分からないならふりをしていたから。

 

あれから6年以上経ったいま、本書に出会って、少しは自分を信じられるようになったのかもしれない、と感じられた。

 

彩瀬まるさんの本は、心の貧しさに温かい光を灯してくれる、さらに理由まで説明してくれる、強く凛としたメッセンジャーだと思いましたよ。

 

熱を帯びて語りすぎてしまいましたね。気付けば足下で猫ちゃんが寝ております。迷い猫でしょうか?

 

もし、気になって文庫を手にとってくださったなら幸いでございます。

本には人の命が込められていますね。

では、またのご来店お待ちしております。

 

なにかなぜか空虚さを感じたときは、涙が溢れるときは、なにか買わなくちゃと思わなくていいから、本屋に足を運んでみてください。きっと、前に進むためのヒントが見つかるはずだから。わたしはそういう人の力になりたくて、この宇治書店を開店させたのだから。たった一人で寒空の中にいないでほしい。あたたかいお店で、声をかけてほしい。どうか、独りだなんて思わないで、ほしいです。